一回限定の印鑑

印鑑イメージ

結婚を決めたのは、一緒に暮らすことを親に反対されたことがきっかけだった。
付き合ってからずっと一緒にいたいと思っていた。

まるで、高校生のように恋愛にどっぷりはまり、彼のとりこになっていた。
一緒に暮らしたい、奥さんになりたいと思ったのも初めてだった。彼のどこに魅かれたのだろう。

優柔不断な私にはない直進するエネルギーの強さだろうか。
はたまた、ぐいぐいと生きているようでたまに見せる繊細な一面だろうか。

貯金なんて一円もなかったが、不思議と不安がなかった。
むしろ、彼の隣にいない未来を考えると怖くなる。

私の家に同棲のお願いをしに行き、「一緒に暮らすなら入籍してほしい」と母に言われた。私たちは、スライド式に結婚の挨拶へ移行した。
雰囲気が和やかだったせいかふわふわするりと結婚に移っていた。

どうしても欲しかったプロポーズは、突如として消えた。はかなかった。悔しかったけれど、なんとなく言えなかった。
でも彼の奥さんになれる。嬉しかった。朝からご飯を一緒にたべられるなんて考えただけでにやけてしまう。
両家の挨拶が終わり、住むアパートを探している時期は、最高に幸せな時間だった。

食料品の買い物をしていても、部屋が決まったら最初に何を作ろうなどと考えてしまう。
家具を選んでいるのも楽しい。

婚姻届を書く日がやってきた。彼の実家、彼の部屋で正座して書いた。
どんな字で書いたらいいか悩み、下手に清書するのではなくいつもの私の字で書いた。
丁寧に。

あとは印鑑だけだ。
突然、彼がかばんをガサゴソする私に言った。

「旧姓になってしまうけど、今までの苗字に感謝を含めて印鑑を作ってきたんだ。この婚姻届だけのために。
絶対幸せにします。一生守ります。別れてこのハンコを使うことが生涯無いようにしよう。」

婚約指輪ではなく印鑑を渡されながらのプロポーズだった。一回限定の印鑑を押す。
なんてぜいたくな婚姻届だろう。
私は、彼の用意してくれた印鑑を握りしめながら「宜しくお願いします」と言った。

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